特設サイト第87回 漢方処方解説(44)荊芥連翹湯

今回、ご紹介する漢方処方は、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)です。

  • 連翹

構成生薬としては、黄芩(おうごん)、黄柏(おうばく)、黄連(おうれん)、桔梗(ききょう)、枳実(きじつ)、荊芥(けいがい)、柴胡(さいこ)、山梔子(さんしし)、地黄(じおう)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、当帰(とうき)、薄荷(はっか)、白芷(びゃくし)、防風(ぼうふう)、連翹(れんぎょう)、甘草(かんぞう)と実に17味を数えます。元々は、「万病回春」に記載される二つの処方を併せ、さらに黄連と黄柏を加え、耳と鼻の両方の病気を一つの処方で直そうと、森道伯(もりどうはく)が創成したとされています。また、処方構成から紐解くと、黄連解毒湯(黄連、黄柏、黄芩、山梔子)と四物湯(当帰、川芎、芍薬、地黄)からなる温清飲(うんせいいん)に残りの生薬を加味したものとも考えられ、この処方の使い方としては温清飲の特徴をもとにすればよいとされます。

その温清飲は、血熱(けつねつ)に用いる「清熱剤」の黄連解毒湯と血虚(けっきょ)に用いる「補血剤」の四物湯を合わせた処方で、充血やのぼせ、出血や炎症、精神的な興奮を鎮め、一方で貧血、血行障害などを治する作用をもちます。そのため、温清飲は貧血や、更年期障害、不正出血など婦人科疾患に用いられることが多く、さらにアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患や神経症にも用いられます。森道伯は、温清飲をベースとする処方として柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)も創成しており、荊芥連翹湯とよく似た構成生薬をもつことが知られています。

また、荊芥連翹湯の中には排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう/桔梗、枳実、芍薬、甘草、大棗、生姜)が含まれているとも捉えることができ、急性の化膿瘡や蕁麻疹、皮膚炎にも用いることができます。そういう点では、花岡青洲(はなおかせいしゅう)が創出した十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)とも多くの構成生薬が共通しており、化膿性皮膚疾患に応用されることも理解できます。

本処方は、いろいろな処方の性格を内包し、急性、亜急性の鼻炎や副鼻腔炎、中耳炎はもちろんのこと蕁麻疹やアトピー性皮膚炎に応用されるなど、非常に幅広い効能効果をもつ処方と言えると思います。

  • レンギョウの花

処方の名称にある荊芥はシソ科ケイガイの花穂で、発汗、解熱解毒剤として、頭痛や眩暈、皮膚炎に用いられる生薬であり、連翹はモクセイ科レンギョウの果実を用いる生薬で、消炎、利尿、排膿を目的に使用されます。この原稿をしたためているときには、すでに盛りは過ぎていますが、レンギョウは春を告げる黄色い花として、街中の公園などで私たちの目を楽しませてくれる植物です。八事キャンパスにも薬用植物として、また初春からの季節の移ろいを示すようにと植栽しております。黄色い花を見掛けたら、春の訪れとともに、荊芥連翹湯の効能効果についても思い出していただけたらいいですね。

(2022年4月22日)

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