特設サイト第92回 漢方処方解説(47)麻子仁丸

さわやかな秋晴れの日がつづいています。朝晩の寒さのせいか、街路樹も日の当たるところから順に色づき始めています。

さて、今回ご紹介する処方は麻子仁丸(ましにんがん)です。

この処方の構成生薬は、大黄(だいおう)、枳実(きじつ)、杏仁(きょうにん)、厚朴(こうぼく)、芍薬(しゃくやく)、麻子仁(ましにん)の6種類です。名称の通り、伝統的には丸剤ですが、医療現場では他の漢方方剤と同様にエキス製剤として利用されています。

麻子仁丸

麻子仁丸

主な適応は便秘であり、効能効果には「常習性便秘、急性便秘、便秘に伴う痔核、萎縮腎」とありますが、とくに高齢者の便秘に用いられています。一口に便秘と言っても種類があるようですが、この処方は「ウサギの糞のようなコロコロとした、乾燥した便(兔糞便:とふんべん)」の場合によく効くようで、排便の回数も少なく、便が硬くて出ない場合で、出ても小さな便がコロコロとといったものに有用だとされています。

便秘に用いる漢方の下剤というものは、以前ご紹介した大黄甘草湯や防風通聖散、桃核承気湯や通導散(つうどうさん)などもありますが、いずれも大黄が配合されています。大黄は、タデ科ダイオウの根茎を用いる生薬で、有効成分としてセンノシド類を含有します。このセンノシド類は、大腸で腸内細菌叢による代謝を受けて、強い瀉下活性をもつレイン-アンスロンとなり、これが大腸粘膜下にある神経叢を刺激して蠕動運動を活発にさせたり、水の通り道であるアクアポリンというチャネルを減らして、大腸内の水分を増やし、便を軟らかくしたりするといった作用機序をもつことがわかっています。

この大黄に加えて杏仁や麻子仁など、植物の種子や果実を利用する生薬が配合されており、これらは油分を含んでいることから潤滑性の下剤として働くと考えられています。杏仁は、バラ科アンズやホンアンズの趣旨を用いる生薬で、アミグダリンという成分を含んでおり、本来は鎮咳去痰薬として用いられ、便秘には同類生薬であるトウニン(バラ科モモの種子)を用いるのが本筋かと思うのですが(桃核承気湯ではそのようになっています)、この処方では杏仁です。また、麻子仁はクワ科アサの果実で、脂肪油を含みます。その他、芍薬は腸管の痙攣を緩和すると考えられています。

本処方は、高齢者をはじめ、やや虚弱な方の便秘に応用される緩下剤ですが、さらに皮膚が乾燥し、便秘するものには潤腸湯(じゅんちょうとう)という処方がいいとされますし、まだまだいくつかの処方や加味法があります。

お腹の調子が悪いと、いろいろなことに不具合がでます。
もしものときは、詳しく症状を伝えて、薬局やドラッグストアの薬剤師にご相談ください。

(2022年11月4日)

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